はじめに

改訂版


 3年以上、コロナワクチンの副作用で苦しんできた症状がようやくおさまり、ようやく元の状態に戻ってきた。そこで気になったのが、このHPのラウダート・シの解説である。2025年は回勅『ラウダート・シー」が発布されて10年。ずいぶんたったもんだ。この間、私にとってこの回勅は私の生きる指針となってきた。この回勅でどれほど勇気づけられてきたことか。しかし、今、私のこのつたない解説書を見るに、私の未熟さや表面的な理解に赤面の思いがする。このまま放っておくのでは無責任過ぎる。そこで、ラウダート・シーに再びチャレンジし、改定版として続けようと考えた。

回勅「ラウダート・しー」の発布と日本教会の反応

 2015年5月24日、聖霊降臨の祭日に公にされた教皇フランシスコの回勅「ラウダート・シ」は、「ともに暮らす家を大切に」という副題が示すように、エコロジーの世界で地球のことを家といっていることを引用し、地球の現状を強く憂い、それを訴えたこの回勅は世界中に大きな波紋を投げかけた。教皇が強く警鐘をならしている地球があまりにも傷つき、汚染され、破壊されているからだ。そしてそのことが貧しい人々がますます貧しくなるように追い詰められている。地球の現状よりも政治や経済が優先される世界。人類の尊厳と知恵はどこでいってしまったのか。教皇はアシジの聖フランシスコの太陽の歌を引用しながら私たちに訴えてくる。
 日本では回勅に対する反応が鈍く、それほど大きな話題にはならなかった。何故日本のカトリック教会で回勅への取り組みが鈍いのかというと、回勅が取り上げている環境の危機という問題は信仰の問題として取り上げられてこなかったからである。
 (ただし、日本司教団は、2017年3月17日に2001年に発行された「いのちへのまなざし」の第3章2にラウダート・シーの諸問題を取り上げた増補改訂版を、そして、2024年7月4日に「見よ、それはきわめてよかった」総合的なエコロジーへの招き、という教書を発表している。)

自分用の解説書
 そのような状態に、それじゃ、自分用に解説書でも作ってみるか、と思い立った。ただ、私は神学や聖書の専門家でもなければ、環境問題の専門家でもないが、しかし、二十年間、山の中で無農薬・有機栽培による農業をしてきたものとして、また、農業の生活に入る以前から、環境問題には市民運動を通して関わってきたものとして、この回勅に無関心でいることはできない。

回勅の目指していること
 地球環境汚染や環境破壊、地球温暖化等による様々な問題が浮かび上がり、その一日も早い解決が叫ばれ、政治問題にもなっているときに、エコロジーの発想は、閉塞状態にあるヨーロッパ思想に大きな風穴を開けてくれた。それはまた、キリスト教にも大きな影響を与えている。 
 「ラウダート・シ」は、ただ単に地球環境汚染や破壊に警鐘を鳴らしているだけではない。ここまで地球を傷つけてしまった私たちの価値観や生活様式、あくまでも利益や豊かさを追求する政治経済機構に回心と刷新を求めるとともに、大きな精神的背景をなしてきたヨーロッパ・キリスト教の思想構造にまで踏み込んで回心を求めている。

 教皇は意図していないだろうけど、東洋の思想、とくに日本の禅仏教の思想に近づいているように私には思われる。この回勅は、ヨーロッパキリスト教の日本への受肉化に大きく寄与するのではないかと考えている。
 
回勅の構成
 この回勅は六章からなっているが、第二バチカン公会議でも採用された「見る」「判断する」「実行する」という三段階からなっている。それぞれ各段階に二章づつあてられている。
 第一章と第二章は、現実の世界と聖書を「見る」ことに当てられている。
 第三章と第四章は、現実の世界をエコロジーの観点から、判断している。
 第五章と第六章は、実行するための指針と行動、教育と、キリスト教を含むヨーロッパ思想への大胆な提言となっている。

第一章 ともに暮らす家に起きていること
 この章は、今、現に地球上で起きていることが語られている。私は「エコロジーの部屋」の「いま地球で」をもって、説明に替えている。二十年も前の文章ではあるが、いまもそのまま通用するということは、残念である。

第二章 創造の福音
 この回勅の根底をなす、聖書的、神学的根拠が語られている。ここで、最新の聖書研究に基づいた、大胆な発言が目を引く。

第三章 生態学的危機の人間的根源
 科学技術至上主義と人間中心主義の及ぼす大きくも深い弊害。人類はこれを克服できるのだろうか。

第四章 総合的(インテグラル)なエコロジー
 西洋思想は二元論と分析の上に成り立っている。エコロジーはこの二元論の克服と統合(インテグラル)の上に成り立つ。インテグラルは総合的というより、統合(綜合)的である。ここに現代世界を救うエコロジーの重要性がある。

第五章 方向転換の指針と行動の概要
 現代世界の政治、経済、社会、そして、個人が有している価値観やライフスタイルを転換していくためには、対立・分裂ではなく、対話が必要である。対立と競合という弁証法的な解決方法ではなく、対話と交わりという、実にエコロジカルな手段が必要である。

第六章 エコロジカルな教育とエコロジカルな霊性
 地球を守るために人々の考え方や価値観、ライフスタイルを変えていくためには教育が必要である。
 そして、その価値観の根底にあるのは、神とともにある深い霊性である。新しい世界が開けてきたエコロジカルな霊性。この回勅の最も感動する箇所である。

 じつはフランシスコ修道会(本名は小さき兄弟会)の総長マイケル・アンソニー・ペリーがフランシスコ会側からのコミットメント(行動責任)として、2016年7月26日に「地球の叫びと貧しい人々の叫び ー 被造物の保護に関するフランシスコ会スタディガイド」を出している。これはフランシスコ会内部資料で、小冊子ではあるが結構まともな解説書である。
 また、今年(17年)になって、ローマ本部より『「ラウダート・シ」を考えるための資料』の日本語版が出されている。この資料は「ラウダート・シ」の読書と分かち合い、聖書と祈りの集会で、五週サイクルで行われる学習と祈りの手引きである。

 なお、この日本語版の2冊は、次のところでダウンロードできる。
「スタディガイド」
   http://www.ofm-j.or.jp/doc/LaudatoSi-OFM-StudyGuideJP.pdf

「考えるための資料」
   http://www.ofm-j.or.jp/doc/LaudatoSi-ReflectionResourceJP.pdf

 ここはフランシスコ会(小さき兄弟会)日本管区のホームページです。

回勅「ラウダート・シ」の出版元
          カトリック中央協議会 

参考としたのは
  LAUDATO SI' on care for our common home  CTS, London
  日本生態学会編 「生態学入門」 東京化学同人
  山崎友紀 「地球環境学入門」 講談社
  森元良太 田中泉史 「生物学の哲学入門」 勁草書房
  ジョナサン・シルバータウン編 池田比佐子訳 「生物多様性と地球の未来」 朝倉書店
  ユルゲン・モルトマン 福嶋 揚 「希望の倫理」 第3章 地球の倫理 新教出版社

アシジの聖フランシスコ「太陽の歌」はこちら

私の資料として「エコロジーの部屋」、とくにその中の「いま地球で」が参考になれば幸いです。