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エコロジーの部屋
  1. 人類の負の遺産
  2. 消失する森林
  3. 地球の温暖化
  4. 大気と水の汚染
  5. 大地が危ない
  6. 生命の危機
  7. 戦争と核
  8. 原発事故
  9. 食の危険
  10. 明日を生きるために
  11. 回勅「ラウダート・シ」のテーマ

人類の負の遺産

  2015年5月に出された、教皇フランシスコは回勅「ラウダート・シ」で、
 「わたしたち皆が共に暮らす家は、わたしたちの生を分かち合う姉妹のような存在であり、わたしたちをその懐に抱こうと腕を広げる美しい母のような存在です。」
 その「姉妹である地球は、神から賜ったよきものを、私たち人間が無責任に使用したり乱用したりすることによって生じた傷のゆえに、いま、わたしたちに叫び声を上げています」(2)
と、いま、地球が置かれている悲惨な状態に目をつぶることなく、「直面する課題の重要性、規模の大きさ、緊急性」(15)に目を向けていこう、と呼びかけている。
 そして、教皇は第一章を「共に暮らす家に起きていること」というタイトルで、
 1 汚染と気候変動 ー 汚染、廃棄物、使い捨て文化、共有財としての気候
 2 水問題
 3 生物多様性の喪失
 4 生活の質の低下と社会の崩壊 ー(森林伐採や環境破壊によって崩壊していく共同  体や社会構造)
 5 地球規模の不平等 ー (貧富・南北問題)
という地球環境と生態系問題から回勅を始めている。

 実はこの「いま、地球で」は、およそ10年前に、信州の山の中で書いたもので、いま呼んでみると非常に稚拙な感じがするが、それよりも10年前に書かれたものが解決するどころかますますひどくなっていることに驚きを感じるのである。もちろん、二酸化炭素をより少なくする技術や、再生エネルギーの技術的進歩は目を見張るものがあり、地球環境への意識も高まっているはいるが、教皇もこの回勅で言われているように「反応の鈍さ」もまた厳然として根深いものがある。

 回勅にしたがって、いま地球が置かれている現状と、このまま進めば地球がどうなるのかを考えてみたい。人間の救いと幸せがこの地球上のものと深く関わっているからこそ、地球に関して無関心ではいられない。すばらしい未来を築いて行くために、まず、地球の今を知ることから始めよう。
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1.消失する森林

 
 この50年間で木材の消費量は3倍、紙の消費量は6倍に拡大している。このことは多くの森林の豊かな国から森林が消失していることを示している。たとえば、フィリピンは1960年代に、日本や先進国への集中的な木材の輸出により、国土の80%が森林だったのに、今や国土の30%を切るまでになって、木材輸入国になってしまっている。
外貨獲得のために即効性のある木材の輸出は止まるところを知らず、熱帯諸国の山肌は無惨な様相を呈している。とくに東南アジアや南米でひどく、酸素供給源である熱帯雨林の消失は人類の存在を脅かすまでになっている。また、木材の伐採は熱帯諸国のみならず、亜寒帯に属するカナダやシベリヤですさまじい量の針葉樹が切り出され、そのために、永久凍土が解けメタンガスが地中から吹き出し、それがオゾン層破壊の原因の一つになっている。
緑豊かな国に生まれ育った私たち日本人は、木と紙の文化の中で暮らし、木や紙があって当然と思っている。しかし、木材輸入大国日本が、どれほど世界の森林消滅の原因となっているか、その実感がないだけに恐ろしいことである。
 森林消失はそこにすむ動物、小動物、昆虫などの生きものや生物を根底から抹殺し、生態系を根底から破壊してしまうばかりでなく、森林の恵みで生活している農民たちをも苦しめている。森林消滅に伴う洪水や干ばつによって土壌浸食が生じ、農産物の生産量が著しく落ち、農民が困窮している。たとえば、森林消滅により水源が枯渇し、二毛作、三毛作が一毛作になってしまったところも多い。つまり、収入が二分の一、三分の一になってしまったのである。湯水のように木材や紙を使用している私たちが、東南アジアや南米の森林に住む生きものを抹殺し、生態系を破壊し、農民を貧困におとしめているのである。
 森林に助けられ支えられている人間、その森林をかくも無惨に伐採していく人間、そして、その愚かな行為にかくも無関心な人間。この先どうしたらよいのか、その答えは人間が出さなければならない。
 ちなみに、紙の世界生産量の70%以上は北アメリカ、日本、西ヨーロッパ(世界人口の20%)で消費され、世界の一人あたりの紙消費量は年間約46kgであるが、米国は320kg、日本は232kg、ドイツは200kgである。しかし、ブラジルは31kg、中国は24kg、インドにいたっては3kgにすぎない。
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2.地球の温暖化

 人間や動物の吐く息、ものが燃えたときに出るガス、火山活動などから出る二酸化炭素は 植物が吸収し、代わりに酸素を吐き出している。地球の長い歴史の中でそのバランスは巧妙に保たれてきた。しかし、石炭や石油など化石燃料の消費がこの50年間で5倍に増え、そのバランスが大きく崩れてしまった。

 排出された二酸化炭素のうち50%は海洋や森林、石灰石などに取り込まれて行くが、残り50%は大気に残って累積されていく。この二酸化炭素はメタンガス、フロンガスとともに地球の上空に層となって膜を作り、本来は宇宙に放出される地球から出る熱を取り込み、温室効果となって地球全体の気温を押し上げていく。これがいわゆる地球の温暖化現象である。

                        (気象庁ホームページより)

 今のまま進行すれば、2050年には今より気温が赤道付近では1度、北極や南極では6度も上昇し、それによって北極や南極の氷が溶けて海水面が上昇し、内陸部では砂漠化が加速的に広がって行くと推測されている。地球温暖化がこのまま進めば、今世紀中に南太平洋やインド洋に浮かぶ海抜数メートルしかない珊瑚礁の島々や、海岸地帯の低地(多くは貧しい人々が住み、スラムも多い)、海岸の埋め立て地等は海中に埋没してしまう。
 最近の異常気象も、この温暖化と何らかの関係があるだろう、といわれている。

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3.大気と水の汚染

 石油や石炭などの化石燃料から出る大量のガスや廃棄物の燃焼から出るガスには、二酸化炭素と硫黄分や有害物質が含まれている。これが雨にとけ込んで硫酸、硝酸、塩酸の酸性雨となり、森林や農作物、そして、人体に大きな害を与えている。大気中に放出されるガスには国境がなく、気流に乗って隣国にまでその害を及ぼしている。いま日本で問題となっているのは、中国で放出された亜硫酸ガスが酸性雨となって、日本の森林を枯らしていることである。

 大気汚染は人体にさまざまな害をもたらし、世界中で毎年、数百万人の人がそれで命を落としているという。とくに、今、日本で問題になっているのが、発ガン物質のダイオキシンや酸性雨、大気汚染、工場排水、そして家庭排水などにより河川や海洋が汚染され、地下水も汚染されて深刻な問題となっている。
 1900年に大気中の窒素をアンモニア化し、それで窒素肥料を作る方法が発明され、それによって農作物の収穫が飛躍的に伸びたが、窒素による土壌汚染と地下水汚染が大きな問題となっている。

 汚染された水で育ったプランクトンを小魚が食べ、その小魚を中ぐらいの魚が食べ、その魚を大きな魚が食べるといった食物連鎖と共に汚染物質は凝縮されていき、食物連鎖の最上位にいる人間が食べるときには濃度の高いものになっている。このもっとも悲惨な例が、水銀垂れ流しで多くの犠牲者を出した水俣の昭和電工水俣病事件である。また、今日でも、南米やアフリカで金の精錬に安易な方法の水銀が使われ、水俣病患者を多く出しているという。

ラウダート・シは次のような水問題を挙げている。
・過度な浪費と廃棄、許容限度を超えた地球開発
・持続可能な供給を超えた水の需要。水不足。
・鉱・農・工業・家庭排水による水の汚染。
・水の商品化、私有化。

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4.大地が危ない

植物が根を下ろすことができる土壌は、地球のきわめて表面に薄い膜のようなものとして存在している。この土壌は長い年月をかけて動植物によって作り上げられてきたものである。この膜のように薄い土壌によって植物は繁殖し、それによって土壌浸食も防がれてきた。しかし、土壌が有している能力と自然界による土壌形成の速度以上の耕作がなされると、土壌は痩せ、力を失い、ついには不毛の地となり土壌浸食が始まってしまうのである。
 1950年の全世界における穀物生産量は6億3千万トンであるが、わずか50年後の20世紀最後の年には推定で18億55百万トンと約3倍である。経済の発展と共に食生活も肉や乳製品が多くなり、飼料用として多くの穀物が消費されるようになったためである。また、ここ数年は年間生産量が落ちてきているが、それは旧ソ連邦の土壌が衰退してきているためである。

 また、潅漑や地下水の散水によって地中の塩分が地表に現れ、耕作不能になるところも増えている。古代メソポタミアも潅漑によって塩分が表出し、穀物がとれなくなり衰退し、滅亡したと言われている。
 それとともに地下水の汲み上げ過ぎで、地下水が枯渇、あるいは地下水の水位が極度に低下してきていることも大きな問題である。地下水が枯渇するといずれは耕作地は放棄され、荒れ果てて土壌浸食が始まるであろう。
 過度の耕作と放牧、および、森林減少が重なり、地球上のあちこちですさまじい速度の土壌浸食が進んでいる。地球上の人口は驚異的な数で増え、それとともにますます食糧増産が急務となるであろう。人口増加による食糧増産とそれにともなう土壌崩壊。減反政策を推しすすめながら穀物を大量に輸入する日本、こうした矛盾の中に我々は生きている。

 
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5.生命の危機

 最近、新築の家に住んでいる人たちの間で、ハウスシック症候群といわれる化学物質過敏症が多発していることが報じられている。建材や畳に含まれる防腐剤、壁紙を張るのに用いられる接着剤や塗料に含まれる化学物質、等によって、めまい、どうき、吐き気などをもようし、ひどいときには歩けなくなったり、寝たっきりになってしまう恐ろしい症状である。
 私たちの気づかないようなところで、生命をむしばむようななにかが進行している。
 人間がそうであるように、地球の病状も小さな弱いところ(生き物)に顕著に現れる。そのため地球の健康状態を調べるのに生物多様性の状態を探ることだと言われている。生物多様性とは、生き物の世界を作り上げている膨大な数の「種」の集合体のこととされているが、いまこの生物多様性に種の減少と絶滅の危機が押し寄せているのである。生物多様性は30億年以上もの進化の結果であるが、今日では種の減少と絶滅の速度が自然界で恒常的に生じる速度(基準速度)の1000倍にもなっているという。
 種の減少と絶滅は人間以外の生物の問題にとどまらず、人間自身にも生じてきている。それは私たち人間の衣食住のほとんどを生物多様性に依存し、私たちが生きていく上での根幹をなしているからである。私たちが排出する化学物質はさまざまな生物を減少させたり絶滅させているが、食物や飲用水、衣服や建材を通して人間の体内に入り、さまざまな悪影響を及ぼしている。とくに恐ろしいのは、女性の卵子や胎児に対する影響である。その影響はもっとも弱いところに表れるからである。

 今からおよそ40年前、レイチェル・カーソンは春の森から鳥の声が聞こえなくなった、と「沈黙の春(Silent Spring)」で世界ではじめて環境汚染のおそろしさを告発した。農薬の大量散布により田畑や森林の虫が死に、餌が乏しくなったこと、虫や小魚、餌となる穀物や木の実を通して有害物質が鳥の体内に入り、死亡したり卵を産めなくなってしまった、というのがその原因である。小鳥の減少の原因は、ほかにも森林伐採や干拓、森林の宅地や工場用地としての造成、巨大ダムの造成、などもあげられる。そのどれもが人間が原因となっている。

 鳥たちの置かれている状況は、そのまま人間が置かれている状況でもある。人間だけが害を受けずにすますことはできない。大量生産、大量消費が生み出した恐るべき環境汚染。今それはまわりまわって人間に襲いかかってきている。たとえば、1996年に出版された「奪われし未来(Our Stolen Future)」でシーア・コルボーンは、有害汚染物質のPCBやダイオキシンなどがガンを誘発させたり、ホルモンのバランスを崩し、生殖体にまで影響を及ぼしていることを告発している。
 
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6.戦争と核

 戦争は最大の自然破壊だと言われる。今日、全世界で投入される一年間の軍備費は1兆ドルを超え、その10パーセントから20パーセントもあれば世界中の飢餓を救えるという。破壊のみに使われる全く無駄な費用である。軍備には石油、鉄鉱石、アルミニウムなど地下資源を膨大に使用し、基地や演習地のために広大な土地を占有している。戦争ともなると爆弾が大地を切り裂き、戦車がところかまわず踏みにじっていく。多くの人命が失われ、そこに生殖している多様な生物が絶滅していく。

 破壊のみを目的とした戦争の行き着くところは、原水爆の使用である。世界で唯一の被爆国としてもちろん使用も所有も許すことはできないが、その日本もアメリカの核の傘によって守られており、五大国といわれる国々はいまだに国の威信と国際的発言力を維持するために所有し、核実験を繰り返している。今やインドやパキスタン、おそらくイスラエルも所有するに至り、東西冷戦が終結し、核使用のおそれは遠のいたにしても、いつ南アジアや中近東で核が炸裂するか分からない一触即発の状況である。
 核使用の目的は完全な種の絶滅である。ヒットラーはアウシュビッツをもってユダヤ民族という種の絶滅をはかろうとしたが、いまや核によってそれを成し遂げようとしている。

 最近の新聞紙上によると、コソボ紛争でNATO側は鋼鉄製の戦車をも貫通する劣化ウラン弾を使用し、その飛沫を浴びた兵士が白血病にかかり、死亡していることが報じられていた。我々日本人には遠いところの出来事であり、あまり関心はないようであるが、劣化ウラン弾がはじめて使用された湾岸戦争には気の遠くなるような額の戦費を負担し、決して他人事ではないのである。

 
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7.原発事故

 日本において原子力発電は、あたかも常識かのように語られてきた事柄がある。原発は平和利用である。100%とは言わないが、99.99%安全である。化石燃料があと30年ほどで底をつくと予想されているが、資源の乏しい日本にとって原発によらなければ電力供給は不可能である。CO2を出さない原発は地球温暖化防止の切り札である。等々の理由で、国家プロジェクトとして原子力発電が押し進められてきた。貧しい県にたっぷりの交付金をばらまいての原子力行政である。
 しかし、いよいよ2010年から耐用年数を過ぎた原子力発電所の解体が始まる。放射能を浴びた廃棄物は千年も管理が必要とされているが、どこに保管するのか、どのように管理するのか、まだ決まっていない。そのために、耐用年数が過ぎた原発をあと10年稼働させるという。また、使用済み核燃料の保管場所、つまり、核のゴミ捨て場所も決まっていない。
 政府は原子力発電所の安全性を強調しているが、人間のすることに完全なものはない。チェルノブイリやもんじゅの事故、東海村のあのずさんな事故を見ても、事故はいつかは起こるものであり、起きると多くの人が犠牲になり、事故処理に莫大な費用がかかる。原子力発電は決して安全でもなければ安上がりでもない。(以上2008年作成)

 2011年3月11日、三陸沖大地震と大津波により、ついに原発大事故が発生してしまった。
 福島第一原発がM9.0の地震で自動停止し、大津波によってすべての電源が失われ(ブラックアウト)、原子炉を冷却できなくなり、燃料棒が融解するメルトダウンが起こり、水素爆発を起こしてしまった。
 原発は安全という政府、電力会社、御用学者、そして自治体の言を信じてそこで生活し、ふるさとを築いてきた多くの人々が、一瞬にしてふるさとを、我が家を失うことになった。爆発による高濃度の放射能拡散は広範囲にわたり、人の住めない地域を作り出し、福島県では8万5千人が避難を余儀なくされている。そのほか米や野菜などの農産物、果物、家畜、魚貝海草類にも放射能汚染が見られ、出荷停止や風評被害が出ている。

 太平洋や日本海地域の原発の電力は、ほとんどが東京や大阪の大都市に送られる。今回の福島の事故により、電力をふんだんに使っている私たちの繁栄が、いかに多くの人々の犠牲の上に成り立っている幻の生活であるか、思い知らされることになった。

 原発の安全神話は、完璧に崩れてしまった。安く済むといった経済性も、いったん事故が起これば莫大な費用がかかることが実証された。化石燃料枯渇という脅しも、再生可能な自然エネルギー利用技術の進歩により、克服できる道も見えてきた。
 今、あえて原発が必要なのだろうか。今、五十数機ある原発の半数近くがが停止しているが、今年の電力不足を乗り切ったではないか。これ以上原発はいらない。今ある原発も、危険性の強いものから廃炉にしていく勇気が必要である。原子エネルギーから再生可能な自然エネルギーへの転換が必要である。
 原発事故で避難を余儀なくされ、故郷から離れていった人々。原発事故の避難のため会社の倒産にあい、職を失った多くの人々。家族が、地域がばらばらになり、崩壊していく。これ以上原発による社会崩壊を起こしてはならない。

私たちの子孫のために、安全で安心して住める地球を残していく義務が私たちにはある。
 
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8.食の危険

 昨日(2007.10.9)の朝日新聞「奔流21 中国」という記事の中で、以前から言われていたことではあるが、あらためて戦慄を覚える記事を目にした。それはこういう記事である。
 「北京市の産婦人科医院で7歳の女児に会った。すでに生理があり、乳房はふくらみ始めていた。診察した医師はため息をつき、言った。
 『ホルモン成分を含んだ水産物の影響だろう』
 6歳児にひげが生えた例もあるという」
 消費者の要求に応えるために、時には農産物や養殖水産物にも成長促進剤や成長抑制剤などのホルモン剤が使われることがある。それが成長期にあり、身体がまだできあがっていない子供に重大な影響を及ぼし、生育異常をきたしているのである。

  ホルモン剤の使用はなにも中国産に限ったことではない。日本国内でも大いに使用されている。
 たとえば、種なしブドウである。そもそも植物が実を付けるのは、子孫を残すため、動物や鳥に実を食べてもらい、中にある種を遠くに運んでもらうためである。あくまでも種のために実があるのである。
 しかし、その種がじゃまと思う消費者のために、種なしブドウを栽培するようになった。種なしにするためには、種が出来る前に実を熟させてしまえばよい。ブドウでは種が出来る前にジベリンという成長ホルモン剤を注入し、強制的に成長を早め、熟させてしまうのである。種なしスイカのためにはX線を照射するという。
 私たちがこのスイカやブドウを口にする時、このホルモン剤やX線が消えてなくなっていれば問題はないが、もし、残っているとするなら、とくに子供たちや妊婦の胎児には重大な悪影響を及ぼすこととなる。

  農薬といわれているものには、殺虫剤、殺菌剤(病気予防および治療)、除草剤、そして、生育促進や抑制のためのホルモン剤、そのほか、保存のために放射線やX線照射がある。(たとえば、ジャガイモの芽が出ないようにするため)
 そして新たに問題視されてきているのが遺伝子組み換えである。組み換えられた遺伝子が人間の体内に入り、人間の遺伝子に悪さをするのではないか、と心配されている。

 もうこれは消費者が学習して、意識を深めていくしかない。
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9.明日を生きるために

 大量生産ー大量消費によって地球から大量に搾取し、大量に廃棄するという悪循環を繰り返す限り、人類は21世紀には滅んでしまうだろう。人類は20世紀の後半、経済発展を至上のものとしてわずか50年間で目を見張るような発展を遂げたが、その反面、多くの傷を残してしまった。環境破壊、地球温暖化による異常気象と海水面の上昇、土壌喪失、森林破壊、核拡散、そして、自然破壊と資源の枯渇等である。
 人類は将来になにを残そうとしているのであろうか。地球が数十億年かかって育ててきたこの大自然を、これからの数十年で破壊し尽くしてしまうのだろうか。これはあまりに悲観的な観測だ、人類の知恵はそんなに捨てたものではない、と言う人もいるだろう。そうあってほしいと思う。

 いま、じょじょにではあるが未来に美しい地球を残す試みや努力が始まっている。農薬や化学肥料を使わない農業や森林管理、太陽光や風力、潮力を使った発電、水素エンジン等の技術開発、大量廃棄をできる限り少なくしようとするリサイクル運動、等々である。しかし、このような動きもまだまだごく一部の先進国で、開発途上国にとっては先進国の贅沢な悩みとしか映らない。そして、先進国がさんざん贅沢をしてきて、その結果の責任と義務を開発途上国に押しつけている、あまりにも身勝手すぎると批判している。
 
 いま、私たちに求められているのは発想と価値観の転換である。いまの生活レベルを維持しながら、地球を守ろうとしても無理である。地球の資源は有限であり、いまの経済成長の速度で行けば、近いうちに地下資源も地上の資源も枯渇するし、自然破壊と汚染はますます広がっている。大量搾取ー大量生産ー大量消費ー大量廃棄による経済発展に至上の価値を置くのではなく、少量搾取ー少量生産ー少量消費ー少量廃棄という自然と共に生きる循環型経済に価値を置いていかなければならないだろう。廃棄物をできるだけ再利用して、地球の資源をなるべく使わないようにする考え方である。

 私たち人間は、人間の存続のためにこの地球環境を危惧し、それを守ろうとしている。人間がすべての中心で、人間のためにこの世界が存在しているわけではない。人間はこの被造物の一員に過ぎないのである。
 「人間のための地球」という発想から抜け出し、「地球と共に生きる人間」という発想に基づく生き方が求められている。
 私たちが今できる可能な生き方を探ってみたい。
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10.回勅「ラウダート・シ」のテーマ

14.残念ながら環境危機の具体的解決を探る取り組みは、強力な抵抗によるだけでなく、より一般的に見られる関心の欠如によっても、その多くが挫かれました。妨害的な態度は、信仰者達の中にさえ存在し、問題の否定から、無関心、冷ややかな諦め、技術的解決への盲進にまで及んでいます。
15.この回勅が、直面する課題の重要性、規模の大きさ、緊急性を認識する助けとなることを希望します。

16.回勅の中の重要なテーマ
 ・貧しい人々と地球の脆弱さとの間にある密接な関わり
 ・世界中のあらゆるものはつながっているという確信
 ・テクノロジーに由来する勢力の新たなパラダイム(状況)と権力形態の批判
 ・経済や進歩についての従来とは別の理解の方法を探る呼びかけ
 ・それぞれの被造物に固有な価値
 ・エコロジーの人間的な意味
 ・素直で正直な討議の必要性
 ・国際的な政策及び地域的な政策が有する重大な責任
 ・使い捨て文化
 ・新たなライフスタイル
 
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参考資料

・レイチェル・カーソン   「沈黙の春」  新潮文庫
・レスター・ブラウン編著  「地球環境データブック 2000-2001」  家の光協会
・レスター・ブラウン編著  「地球白書 1997」「同 1998」「同 1999」「同 2000」 ダイヤモンド社
・和田 武著        「新・地球環境論」   創元社
・E・ゴールドスミス編    「地球環境用語辞典」  東京書籍
・マイケル・アラビー編   「エコロジー小事典」  講談社ブルーバックス
・石 弘之著        「地球環境報告」「同 U」  岩波新書
・シーア・コルボーン他著   「奪われし未来」    翔泳社
・アル・ゴア著       「不都合な真実」  実業之日本社文庫
・  同          「不都合な真実 2」   同
・WWF          「生きている地球 レポート2016」 要約版
・教皇フランシスコ 回勅「ラウダート・シ」 カトリック中央協議会