第六章 エコロジカルな教育

202−215


202 霊的で教育的な課題
 進路を改めるべき物事は沢山あるが、とりわけ変わる必要があるのは私たち人間である。
 私たちは文化的で霊的で教育的な重要課題に直面しており、再生のための長い道に踏み出すようにとの要求を突きつけられている。

T 新しいライフスタイルを目指して

203 消費主義と自由
  消費主義や技術経済パラダイム(状況)の中で、現代の人類はまだ方向性や指針につながる自己認識に至っておらず、また、こうしたアイデンティティの欠如が苦悩の一因となっている。

204 消費主義的な生活様式
 人は自己中心的にまた自己完結的になるとき、貪欲さを募らせる。心が空虚であればあるほど,購買と所有と消費の対象を必要とする。
 消費主義的なライフスタイルへの執着は、とりわけそうした生活を続けられる人が少数であるときは、暴力と相互破壊へと導きうるだけである。

205 人間の尊厳を取り戻す
 人間は、一方では最悪なまでに身を落とす可能性がありつつも、他方では、心的また社会的な制約があろうとも、自らを越えて立ち上がり、善なるものを選び直し、新しいスタートを切ることが出来る。

206 ライフスタイルの見直し
 ライフスタイルの変化は、政治的、経済的、社会的権力を振るう人々に働きかける健全な圧力をもたらした。それは消費者運動が、特定の製品の購買や使用の拒否によって実現している。
 今日では、環境悪化の問題から、私たちのライフスタイルの見直しが迫られている。

207 『地球憲章』
 「私たちの時代を、生命の新たな尊厳への目覚め、持続可能性を実現するための確たる決意、正義と平和を確立するためのさらなる努力、そして、喜びと祝福に満ちた生命とともに想起される時代にしようではないか」

208 個人主義の克服
 閉塞性と自己中心性を打ち破る、自己を越え出るという基本的姿勢が、他者と環境に対するどのような配慮をも可能たらしめる土台である。

 消費主義と個人主義という、私たち一人一人のあり方、生活スタイルを見るとき、私たちは政治経済や社会から大きな影響を受けるとともに、反対に、私たちが政治経済や社会に影響を与えていることも事実である。たとえば、環境保護団体の運動や消費者団体の不買運動など、国を変え、世界を変えるほどの影響を及ぼしている。
 そもそも、これほどの環境問題が世界政治や経済を動かすほどの影響力を持ったのは、196年代のはじめの、アメリカの一人の女性レイチェル・カーソンの告発からである。
 この地球を取り戻すために、私たち一人一人の生活の見直し、価値観やライフスタイルを見直すことから始めよう。ここに人間の尊厳がある。


U 人類と環境との間の契約に資する教育

209 教育上の課題
 今日の文化的また生態学的な危機の重大さについての自覚は、新しい自覚へと置き換えられなければならない。
 消費習慣を大きく変化させなければならない国々の若者達の中には、別の習慣を作り出すのを難しくしている、極端な消費主義と豊かさの中で育ってしまった。私たちは、教育上の課題に直面している。

210 環境教育
 初期の環境教育は、主に科学的教育の提供と意識の啓発、環境リスクの回避とを中心にしていた。
 現在では、功利主義的な考え方を土台とする近代の『神話』(個人主義、限りなき進歩、競争、消費主義、規制なき市場)批判を含みつつある。
 それはまた、さまざまなレベルで、エコロジカルな平衡を回復させようともしている。

211 エコロジカルな市民性
 健全な諸徳を培うことによってのみ、無私でエコロジカルな献身をなすことが出来る。
(具体的な実行例が挙げられている) 

212 小さな努力が世界を変える
 こうした行いが私たちに自尊心を取り戻させ、また、より充実し人生を送らせ、地上の生活が労苦に値するものと感じさせる。

213 家庭は生命の文化の中心
 私たちはまず、過程の中でいのちに対する愛と敬意の表し方を学び、ものを適切に利用すること、整頓することと清潔にすること、地域の生態系を尊重すること、すべての被造物を気遣うことを教わる。

214 教会の役割
  すべてのキリスト教共同体は、エコロジカルな教育において果たすべき重要な役割を有している。
 神学校や養成機関で、責任を持って質素な生活を送るよう、神の世界を感謝のうちに観想するよう、貧しい人々の必要と環境保護とに関心を抱くよう教えてほしい。

215 美しきものへの関心
 美に目を向け、それを味わう学びによって、私たちは利己的な実用主義を退けることを学ぶ。
 人間や生命や社会について、また自然とのかかわりについての新しい考え方を普及させない限り、教育における私たちの取り組みは不十分で効果の乏しいものとなるだろう。

 地球を守るためには、教育が大切である。子供たちや大人への教育。そして、家庭の大切さ、そう教会の役割も大きなものがある。
 生きとし生けるものの命を大切にし、神に造られたものを守っていく、という心を育てていく。そのような使命が私たちあることを心にとめたい。