第四章 総合的なエコロジー

137−146


T 環境的、経済的、社会的エコロジー

138 エコロジーとは
 エコロジーとは、生命体とその生育環境との関わりの研究である。
 すべてはつながり、関わり合っている。
 私たちの遺伝情報の大部分は、多くの生物と共有されている。

139 私たちは自然の一部
 自然を、私たち自身とは関連のないものと見なすことは出来ない。
 私たちは自然の一部で、その中に包摂されており、それ故、自然との絶えざる相互作用の中にある。
 さまざまな自然システム間の相互作用、及び、社会の諸システムとの相互作用を考慮した、包括的解決の探究が不可欠である。

140 生態系とは
 「生態系(エコシステム)」について考慮するのは、それらの最善の利用法を見極めるためばかりでなく、有用性とは別の内在価値をそれらが有しているからである。
 それは、神の被造物として、それ自体において善なるもの、感嘆すべきものだからである。
 「持続可能な利用」について話す際は、各生態系の再生能力が考慮されなければならない。

141 経済的エコロジー
 経済成長には、、、「経済的エコロジー」が必要である。環境保護は「開発過程の不可分の部分とならなければならず、それから分離しては考えられないもの」である。
 経済学を含むさまざまな分野の知識を結集する、より全人的で統合的な人間の知恵が必要である。

142 社会的エコロジー

 「社会的なエコロジー」は家族から始まって、地域的、国家的、国際的な共同体へと社会全体に広がっていく。
 法を尊重する精神の欠如 − 法律は適切に書かれているのに、多くの場合、死文となっている。こうした状況で、環境関連の法律や規制に、真の実効性を期待出来るだろうか。

U 文化的エコロジー

143 文化とエコロジー
 エコロジーはまた、人類の文化財の保護に、その最も広い意味において、積極的に関与する。
 エコロジーは専門家の科学者と人々の対話を大切にし、地域文化により大きな関心を払うように要求する。

144 均一化される文化
 我々人類の消費主義的な発想は、今日のグローバル化した経済構造によって助長され、諸文化の均一化をもたらし、全人類の多様性を損ねる。
 そのため、地域文化を基礎に据え、民族や文化の諸権利を尊重し、その歴史の歩みを考慮することなしに地域共同体の発展はあり得ない。

145 文化の消滅
 一つの文化がなくなることは、植物や動物の一つの生物種が消失することと同様に深刻、否、より深刻である。

146 文化的伝統を守る
 先住民共同体とその文化的伝統への特別な気遣いを示すことが不可欠である。
彼らにとって、土地は神からの、またその地に眠る先祖達からの贈り物であり、自分たちのアイデンティティと価値あるものを守り続けるために、人々の交流の場として必要な聖なる空間である。


 私たち人類が住み、生活しているこの地球が、搾取され、汚染され、破壊されている。しかし、この地球に住んで、生活しているのは人間だけではない。さまざまな動物や鳥類、昆虫や虫たち、そしてそれ以上に実に多様な植物たち。この生き物たちは互いに支え合い、支えられ合い、生かし合い、生かされ合っている。
 私たちは生きとし生けるものと、深い生態的つながりの中で生きている。
 また、多くの人々が大自然の中で共同体を造り、そこで生き、生活をし、そこに文化が息づいている。
 現代の大量生産、大量消費の生活様式により、自然が破壊されてきた。それは、そこに住み、生活し、文化を気づいてきた人々とその共同体を、同時に破壊することでもあった。
 そのために教皇フランシスコは、現代社会に人々の共同体と文化を破壊する非人道的、非人間的(もちろん非福音的)な行為を批判するのである。
 私たちは、エコロジーを多面的に、つまり、経済、社会、文化的な面からも見なければならない。