第三章 生態学的危機の人間的根源

106ー114


U 技術主義パラダイムの地球規模化

 正直言って、この3章は非常に難解な日本語で、理解困難な箇所が多々あります。翻訳の問題なのか、私の理解力のなさなのか。この3章で読解が止まってしまい先に進まなくなってしまいました。そこでラウダート・シの英語版(Catholic Truth Society, London)を手に入れ、私の貧弱な英語力で、私なりに意訳・要約したものを載せてみます。あくまで要約です。非常にわかりにくい「技術主義(テクノクラティック)パラダイム」を「科学技術至上主義」と訳してみました。


106 深いところにある問題の根

 以上のような問題の根はもっと深いところにある。それは、荒削りで一面的な発想の科学的合理性というもので、自由に好きなように相手を扱って、支配してしまう。
 人類は今まで、絶えず自然に介入してきたが、それは自分を自然に合わせ、自然が与えてくれるものを手に入れる、というものであった。しかし、今では、好きなように自然を搾取するようになり、人類と自然とは友好的でなくなり、かえって対立するものとなってしまった。そして、かぎりなく際限なき成長という考えが広まっていった。それはまた、地球資源は無限であるといった誤った考えの結果、限りなく搾取されるままになった。

107 科学技術が規範となる
 科学技術の方法論や目的が個人の生活や社会の規範となるところに、今日の世界のいろいろな問題の原因があり、その結果として環境悪化などが進んでしまった。
 科学技術によって生み出されたものは、中立的なものであり得ない。なぜなら、力ある人々の利害に応じて、その作り出されたものが我々の生活様式や社会的な可能性を支配し、変えていくからである。

108 科学技術の支配
 (といって、一つの思想、政治形態、生活様式にまでなってしまった科学技術至上主義を)別の在り方や技術を単なる手段と見なす発想は考えられない。それほどまでに、科学技術至上主義は私たちを支配してしまった。科学技術は、あらゆるものを科学技術の論理の中に押し込め、その論理ですべてを支配しようとしている。

109 
 科学技術至上主義は、経済や政治においても支配の手を伸ばそうとしている。
 経済は、人類に及ぼす負の影響を顧みず、ただ利益を追い求めて、科学技術の進歩を受け入れてきた。
 地球規模の金融危機や環境悪化から学ぼうとせず、飢餓や貧困も市場の成長によって解決出来ると考えている。
 貧しい人たちのための経済の仕組みと社会的取り組みの進展があまりにも遅いにもかかわらず、私たちは浪費的で消費的な「過剰な発展」に安住している。

110 科学技術の細分化

 科学技術に固有の専門分野の細分化は、より広く状況を理解するのを困難にしている。これが今日の世界のより複雑な問題、とりわけ、環境と貧困に関する問題の適切な解決策を見出すのを難しくしている。
 生活は次第に、私たちの生き方を意味づける重要なキーとなる科学技術の状況に、どっぷり浸かるようになってきました。
 環境悪化、不安、生きることや共同生活の意味の喪失など、今直面している具体的な状況の中にこのような病的兆候が多く見られる。

111 科学技術至上主義に対して
 自然保護の文化は、汚染、環境破壊、天然資源の枯渇などの喫緊の問題に対して、一連の緊急を要する一部の措置とするような、矮小化は出来ない。
 科学技術至上主義に対しては、明確なものの見方、考え方、方針、教育プログラム、ライフスタイル、そして、霊性が必要である。
 環境問題が生じると、それにたいして技術的修復だけを追求することは、実は相互に結びついているものを切り離し、全地球システムに及ぶ問題の真相と根深さを覆い隠すことになる。

112 科学技術を制する力
 それでも私たちは、あらためて未来像を広げることは出来る。それは、わたしたちが科学技術を制御し、方向付ける自由を持っているからである。その自由を、より健全で、人間的で、社会的で、そのための欠くことが出来ない進歩に役立てることが出来る。

113 目的と意味の追求
 人々が、もはやしあわせな未来など信じていないように見えるのも事実である。世界の現状や技術的可能性に基づいたよりよい明日など信じていない。
 人類を覆っている深い変化の中で、立ち止まって生の深みを取り戻すことは、非常に困難になってきている。
 しかし、こうしたことに甘んじることなく、あらゆるものが持つ目的と意味を探し求めよう。そうしなければ、わたしたちはむなしさを耐え忍ぶために現状を正当化し、別の現実逃避の方法を探すことになるだろう。

114 文化的変革
 こうしたことのすべてが、大胆な文化的変革を前進させる差し迫った必要性を示している。
 もっとゆっくりと今までとは違う方法で現実を見つめ、今までなされてきた積極的で持続可能な進歩を十分に生かすと共に、抑えが効かなくなった誇大妄想によって一掃されてきた価値と目標を取り戻すことが必要である。


 科学技術至上主義という考えが地球上を覆い、政治、経済、文化、生活様式にまで深い影響を及ぼしている。そこでは科学技術の進歩と大量生産、大量消費が政治経済の中心となり、その結果として、大量放棄、環境汚染、地球からの大量搾取による資源の枯渇等の問題が生じてきた。
そして、これらと並行して、貧困問題が深く進行していった。
 これらの諸問題に対して、政治や経済界の反応は鈍く、その取り組みも遅々たるものがある。
 これに対して回勅は、私たちにはまだ、科学技術を制し方向付けるだけの力と自由はある、と希望をもって前進しようと呼びかけている。