第三章 生態学的危機の人間的根源

101ー105


101 危機の中の人間行為
 生態学的危機の兆候をいくら記述しても、その危機の人間的な根源(原因)を認めないなら、ほとんど意味がありません。
 支配的になっている技術主義パラダイム(枠組み)と、人間とその行為が世界の中で占める位置に焦点を当てて、(そのことを熟考してみよう)。

T テクノロジー − 創造性と権力


102 テクノロジーの肯定的評価
 人類は、技術躍進が重大な決断を迫る岐路に立たされる新時代に入りました。
「テクノロジーは、わたしたちにすばらしい可能性を与える、神が授けたもうた人類の創造性の驚異の産物」(ヨハネ・パウロ二世)
 こうした進歩、とくに医療、工学、通信の分野での進歩をありがたく思い、喜んで享受するのを禁じることが出来るでしょうか。

103 生活の質を向上させる重要な手段
 テクノサイエンスは、生活の質を向上させる重要な手段を生み出すことが出来ます。
 それはまた、芸術作品を生み、物質世界に埋没した人々を美の世界へと「跳躍」させてくれます。

104 テクノロジーと権力
 (テクノロジーの進歩が)知識を持った人々、なかでもそれらを利用する経済力のある人々に、人類全体と全世界に及ぶ強大な支配権を与えてきたのです。
 少数の人がそうした権力を握ることになれば、きわめて危険です。

105 増大し続ける権力
 はかりしれない科学技術の発展に、人間の責任感や価値観や良心の成長を伴わせてこなかった。
 わたしたちは、増大し続ける権力を前にして、なすすべもなく、裸にされ、無防備にされています。


 科学技術の発展の早さとその高度化は驚くべきものがある。わたしたちは科学技術の発展の成果を、通信や交通、医療などの面で豊かに受けている。しかしその反面、それは地球破壊や地球汚染、人間の精神や社会の崩壊という重大な危機を生み出すことになってしまったが、それに対する人類の対応は遅々としたものである。
 これらの危機の根底には、人間が作り出した原因があることを認めなければ、原因解決には繋がらない。
 科学技術至上主義の根底にあるそれらを見つめ、その解決を探っていくのは我々の義務であり責任である。