第二章 創造の福音


62 科学と宗教の対話を求めて

 第二章は神の創造に関する聖書的、神学的考察で、この回勅の土台をなす重要な章である。
 回勅は近世ヨーロッパ思想が精神と物質という二元論に分かれ、それが宗教と科学の分離を引き起こし、宗教の無い科学、科学の無い宗教に陥っていることを認めつつも、それでも宗教と科学は中身の濃い対話が出来ることを主張している。

 そもそも紀元前6世紀、ギリシャの哲学者プラトンの精神世界と物質世界という二元論は、キリスト教に大きな影響を与え、それは霊魂と肉体、天の国(神の国)とこの世、形相と質量など二元論的キリスト教思想が形成されていった。
 精神世界を重視し、物質世界を軽視するという傾向は、創造と救いという神の救いのご計画を分断し、いつからか神の救いだけが強調され、神の創造が神話化され、意識されなくなってしまった。
 回勅は、神の創造の正当な地位を取り戻そうとしているかのようである。